茅じまい——春、屋根の恵みをしまう日

雪が溶け、春の気配を感じ始めるころ、北村集落では「茅じまい」の作業が行われます。

これは、雪が降る前に刈り取り、冬のあいだ自然乾燥させた茅を倉庫に納める春の風物詩です。

 

かつては、茅は各家庭の屋根裏に保管されていました。しかし、今では集落の大きな共同倉庫がその役割を担っています。人々が協力しながら一つの営みを支える姿は、どこか茅葺屋根の葺き替えとも重なって見えます。

 

今年の茅じまいには、私たちの会社からは3名が参加しました。地元の方々も加わり、総勢20名以上での作業となりました。

 

収穫量は14〆(しめ)——1〆は、茅を束ねた際の円周が約4メートルという単位で、14〆あれば茅葺き屋根の「妻側」一面がようやく葺けるかどうか、というくらいの量です。

 

もちろん、それだけでは足りません。実際の葺き替え作業には、他の地域から持ち込んだ茅も組み合わせることになります。

しかし、その土地で育った茅を、その土地のやり方で葺くことが、屋根をもっとも長持ちさせているのだと年々、実感しております。

 

茅をより良く育てるために、他の地域では「野焼き」を行うこともあります。

地表の枯れ草や雑木を焼き払い、茅の生育を促すための営みですが、北村集落ではその実施が難しいのが現実です。茅場と集落とが近く、飛び火のリスクが高いため、簡単に踏み切ることはできません。

 

だからこそ、私たちは工夫と手間を惜しまず、今ある茅場を丁寧に維持しようとしています。

 

いつかは、集落の山裾を茅場へと再生させたい——そんな夢もあります。けれどまずは、この小さなサイクルを絶やさずに守ることから。私たちの手でしまい込んだその束の一つ一つに、屋根と暮らしをつなぐ希望が詰まっています。

この茅を大切に使いながら、北村集落の茅葺き屋根を守っていきたい。そんな思いを胸に、今年も「茅じまい」を終えました。

 

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