
京都と神戸を拠点に活動する茅葺き職人をパートナーに持つ事務員の塩澤さん。
母親の実家はもともと茅葺き屋根の家で、子どもの頃から母親に茅葺きについての話を聞いていたものの、本格的に興味を持ち始めたのは、建築学を学んでいた学生時代に参加した茅葺き体験ワークショップがきっかけでした。
「職人さんの仕事に興味があって参加を決めたんですが、その時に見学させてもらった茅葺き屋根の家に入った瞬間、その空気感や雰囲気に心地よさを感じたんです。」と、当時の体験を振り返ります。
約15年の月日を経て、美山町の茅葺き屋根に住むことを決意した塩澤さん。
「はじめは不安な気持ちもありましたが、軒先からの眺めや、屋根から立ち昇る蒸気が朝日に照らされる様子など、そういった景色を毎日見ながら生活できることに幸せを感じています。」と、嬉しそうに語ってくれました。
自宅周辺で茅刈りをしたり、縄を編んで縄綯いを覚えたりと、茅葺き屋根を維持するためにできることを家族と一緒に行っています。昨年、屋根を一部修理した際には、その茅くずを田んぼの肥料にするなど、理想とする茅葺き本来の循環型生活に一歩近づいています。
美山町での生活を始め、茅葺き職人の重要性を再認識したといいます。
「茅葺き屋根を守るには職人さんたちの存在がとても大きいと実感しています。何かあったらすぐに相談できる。それだけで安心できるんです。」事務員として、職人の働く姿を近くで見ている彼女だからこそ、信頼がより一層強いのでしょう。
茅葺き屋根に住むこと。それは単なる住まいの選択ではなく、暮らし方の選択でもあります。
「茅葺きという文化を残していくためには、茅葺き職人だけでなく、そこに住む人も一緒に力を合わせていかないといけません。屋根仕事以外でも茅葺きに携わることにはどんどん挑戦していきたいです。」
現在の暮らしについて熱く語る彼女から、茅葺き屋根がもたらす豊かな生活の魅力が伝わってきました。