
【工事概要】
■ 工事名
美山町北 S邸葺き替え工事
■ 工事場所
京都府美山町
■ 工期
約1ヶ月
■ 工事概要
西面妻の葺き替え
■ 担当者コメント
今回の現場は、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている「かやぶきの里」の集落内にある、「ちいさな藍美術館」を営まれているお宅でした。
連日猛暑日が続いたため、作業時間を朝夕にずらす、昼休憩を長めにとるなど、熱中症対策にも十分に気を配りながら工事を進めました。
この建物はもともと庄屋だった家で、集落のなかでもひときわ大きな屋根を持っているのが特徴です。北山型と呼ばれるこの地域特有の茅葺き民家に見られる「馬のり(千木)」は、通常5本ですが、この建物では屋根の規模に合わせて7本が設けられています。その堂々とした佇まいからは、かつての役割や歴史の重みが伝わってきます。
今回葺き替えを行ったのは、西側の妻面です。屋根の勾配が急であるうえに、西日がよく当たる方角のため、乾燥しやすく茅が長持ちしやすい条件が整っています。また、屋根内部に残っていた古茅も良好な状態だったため、今回はその古茅を再利用しました。少し黒っぽく縞模様に見える層が、再利用された部分です。
この建物では、屋根裏に上がって茅の様子を間近で見ることができます。内側から眺めることで、外観とはまた違った茅葺きの魅力を感じていただけると思います。
屋根の納まりにも見どころがあります。軒の第一層である「編み付け」には、「おがら(麻の茎を乾燥させたもの)」を使用しています。現在では希少な材料となっていますが、このように実際の現場で使うことで、伝統的な技法や素材を次世代へと受け継ぐことにもつながります。
今回は親方も現場に立ち、入社3年目の若手職人に指導しながら一緒に屋根を葺きました。このように、親方から直接指導を受けられる機会を通して、美山の伝統技術をしっかりと身につけ、さらに成長していってほしいと願っています。
美しい茅葺きの風景を次の世代にも残すために、これからも仕事に真摯に向き合い、若い職人たちとともに、歩みを重ねていきたいと思います。
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