夕日寺健民自然園「里山ふるさと館」 葺き替え工事完了

【工事概要】

 

■ 工事名

夕日寺健民自然園「里山ふるさと館」 葺き替え工事

 

■ 工事場所

石川県金沢市

 

■ 工期

約3ヶ月

 

■ 工事概要

全面葺き替え工事

 

 担当者コメント

今回の現場は、石川県金沢市にある夕日寺健民自然園「里山ふるさと館」でした。
この建物は旧鳥越村(現・石川県白山市)から移築された農家建築で、屋根裏は養蚕のために大きく取られています。また、妻側に設けられた大きな窓は「ヒダチ窓」と呼ばれ、明かり窓としてだけでなく、大雪の際には出入り口としても使われていたそうです。現在は、山間の暮らしや文化を伝える貴重な施設として、多くの人に親しまれています。

 

旧鳥越村は県境を越えた岐阜県側に合掌造りで知られる白川郷を擁する地域でもあります。同一の建築様式というわけではありませんが、雪の多い地域ならではの工夫などが屋根の随所にみられ、白山山系の山間地域に育まれてきた文化のつながりを感じさせるものでした。

 

そうした背景もあり、美山周辺とは異なる構造や技法に触れる機会となり、職人としても学びの多い工事となりました。屋根の下地は非常に簡素で、一般的な茅葺屋根に多く見られる垂木のない構造でした。普段とは異なる葺き方や判断が求められる場面も多く、なかでも破風まわりの茅の収め方は特徴的でした。

 

また、今回の工事で特に印象深かったのは、地元の方々が現場に関わってくださったことです。地元の大工さんに加え、応援に来てくれた職人の紹介で、茅葺きに興味を持つ石川県出身の若い方も作業を手伝ってくださいました。人の縁を通じて、思いがけず地元の若い世代が現場に加わってくれたことは、これからの茅葺文化の継承を考えるうえでも、希望を感じる出来事でした。

 

この地元の大工さんは旧鳥越村周辺のご出身で、実際に茅葺屋根の家で生まれ育った方でした。一緒に作業を進めるなかで、幼少期の茅葺き民家での暮らしの記憶などを聞かせていただきました。そうした話は、図面や資料からは決して読み取ることのできない、屋根の下で育まれてきた「生きた知恵」を教えてくれるものであり、私たち職人にとっても『茅葺き屋根と暮らし』について考えさせられる時間となりました。

 

今回の葺き替え工事は、技術的にも挑戦の多い現場でしたが、それ以上に、地域の方々とともに作業を進める中で、多くの学びや気づきを得ることができました。この経験は、今後の仕事においても確かな糧となると感じています。