あの日の茅が屋根の材料に。かやぶきの里の「茅じまい」

春の気配が本格的になった北村集落・かやぶきの里で、今年も「茅じまい」が行われました。

冬のあいだ自然乾燥させていた茅を倉庫に収める作業は、集落の春の風物詩です。例年通り繰り返される風景ではありますが、今年の倉庫に並ぶ茅は、私たちにとっていつもとは異なる特別な意味を持っています。

あの日の賑わいが、19〆分の屋根の材料に

今回の茅は、昨年11月に開催した「茅刈り体験会」で参加者の皆さんと刈った茅です。 寒さの中で参加者の皆さんが丁寧に刈り取ってくださった茅。それが一冬を越えてしっかりと乾き、いよいよ屋根の材料としての準備が整いました。

 

今年の「茅じまい」には、私たち社員も5名が参加しました。2カ所の茅場から運び出した茅は、合わせて「19〆(しめ)」となりました。1〆は円周約4メートルという大きな束ですが、それが19〆。参加者の皆さんと刈った茅が、こうして確かな分量となって倉庫に積み上がったことに、深い感慨を覚えます。

 

『茅場の再生』への想い

北村の茅場が今年「ふるさと文化財の森」に指定されたこともあり、住民の方々の間で「この地の茅を自分たちで育て、守っていく」という自給への意識が、より一層高まっているように感じられました。

「茅場の再生」という未来に向けた具体的な話も出るなかで、この「茅じまい」という行事は、単なる片付け作業ではありません。その年の収量や茅の状態を確かめる、村にとって大切な一日なのだと改めて実感しました。

 

「日役(ひやく)」という集落の共同作業として、この営みが今も守られている点に、北村の伝統の力強さを感じます。休憩の時間、皆でいただいた栃餅の素朴な味わいも、そんな昔ながらの連帯感を象徴しているようでした。

『その土地の茅を、その土地の屋根へ』

現在、全国的な茅場の減少により、他の地域の茅を組み合わせて使うことも少なくありません。しかし、その土地で育った茅を使い、その土地の作法で葺くことこそが、屋根を最も長持ちさせる最良の道であると私たちは考えています。

 

『いつかは山裾一面を、豊かな茅場へ再生させたい』

そんな大きな夢が少しずつ現実味を帯び始めています。まずは、今ある環境を丁寧に維持し、一つ一つの束を大切に扱う。そうした地道な積み重ねが、かやぶきの里の景色を明日へと繋いでいき、そして、より良い未来へと変えていくものだと信じています。

 

 茅葺き屋根のある暮らしを繋ぐこの大切なサイクルを、これからも皆さんと共に守り続けていきたいと思います。