茅葺きの舞台裏 ― 国産素材の物語
日本の屋根を支えてきたのは、職人の手だけではありません。
山や田んぼで素材を育てる人、その素材を加工し、現場へと届ける人——。
多くの『見えない担い手』が、日本の伝統的な茅葺き文化を支えています。
しかし今、農業や林業の在り方の変化、気候変動などによって、国産素材を取り巻く環境は大きく揺らいでいます。
それでも私たちは、「日本の屋根には、日本の素材を使いたい」という思いを大切にしています。
こうした地道な取り組みが、巡り巡って日本の山林や草原の維持、そして文化の継承へとつながっていくと信じています。
この連載では、『茅葺きの舞台裏』にいる素材の担い手たちを訪ね、その仕事や思いを伝えていきます。
第一回 田尻製縄所 様(京都・福知山)
京都・福知山の田尻製縄所は、国産稲わらにこだわり続ける数少ない製縄所のひとつです。
夫婦二人で営む小さな工場ながら、茅葺き屋根だけでなく、祇園祭の山鉾や文化財の修復、松の枝を雪の重みから守る「雪つり」に使われるなど、全国各地でその縄が使われています。